「朝陽は多分、先輩のことを待ってると思います」


あれから彼は裕一先輩の名前すら口にしない。
でも、屋上で踏みとどまったとき、吹っ切れたような清々しい顔をしていた。

だから、きっと先輩の方から来るのを待っている。


「でも……」


先輩が朝陽を突き落したことを、仕方がないなんて言うつもりは少しもない。
でも、今朝陽が先輩を許そうとしているのなら、私は見守りたい。


「朝陽は、前に進みたいはずです。先輩にも、そうしてほしいはず。今会わなければ、一生会えません」


このチャンスを逃したら、ますます会いづらくなる。


「わかった」


ごしごしと涙を拭いた先輩は、険しい顔をしたものの、覚悟を決めたようだった。