「どうしたの? どこか痛い?」


さっき、頭蓋骨を割って侵入してこようとしたものは、なんだったのだろう。

今はもう、痛くない。


「ううん」


私がそう答えると、母は「はーっ」と大きく息を吐きだした。

私はベッドに寝ていた。
真っ白な天井、クリーム色のカーテン。
そしてこのツンと鼻につく消毒の匂い。

おそらくここは病院。

そうか。
あの時、頭が痛くてたまらなくなって、倒れてしまったんだ。

でも、あの時?


「先生、呼んでくるね」


母はそう言うと、それ以外のことはなにも話さず病室を出ていった。


左手には点滴が繋がれていた。

ポタリポタリと垂れる液体は、私のなにに作用するのだろう。
脳に入り込んだ悪い物質を追い出してくれるのだろうか。