隠しきれないから謝罪、というのが腑に落ちないけど、一歩前進したことは違いない。


「増田さん、ありがとうございました。早紀のお母さんに伝えます」


私はすぐに早紀の家に電話を入れ、事の成り行きを説明した。
すると、電話口でお母さんが泣き崩れてしまった。

ずっと、ずっと……悔しくてたまらなくて、耐えてきたに違いない。


『つぐみちゃん、本当にありがとう。早紀は……いいお友達を、持ったのね』


嗚咽の合間に聞こえるお母さんの声に、私まで泣きそうになる。


「いえ、私が感謝してます。早紀は私に大切なことを教えてくれました」


私は知らなかった。

私のことをこっそり見守ってくれている人が、たくさんいること。
悲しい、苦しいという負の感情を、楽しいうれしいという正の感情が和らげてくれること。
そして、生きたいと強く願うことで人は強くなれること。