「はい。お願いします」


彼の腕につながれた点滴はまだ外れることはない。
それでも、彼の命はこの世につながっている。

看護師が点滴を交換している間、私は窓の外を眺めていた。
すると……。


「あっ……」

「どうした、つぐ」

「虹、だ。朝陽、虹が出てる」


今日は朝からしとしとと雨が降り続いていた。
でもいつの間にか上がっている。


「ようやく雨が止みましたね。明日は晴れだそうですよ。それではなにかあったら呼んでください」


看護師がそう言って部屋を出ていくと、胸がいっぱいになる。
朝陽に心に降り続いていた雨も、ようやく上がった。


「見える?」


カーテンを全開にすれば、寝ている朝陽からも虹が見えるはず。


「うん」


見事なまでにくっきりと浮き上がった七色の橋は、私たちに笑顔をもたらした。