私の手を握る彼の手に力がこもる。
彼は淡々とした口調で話すけれど、時々顔をゆがませる。
それは、彼にとってこの一年が楽しくもあり、死へのカウントダウンだったこともあるからだろう。
私の知らないところで、ずっと苦しんでいたのかもしれない。
「つぐが辛いことばかりじゃないと教えてくれたから、俺は未来を信じることができた」
朝陽の温かい言葉が胸にジワジワと流れ込んできて、体温まで上がりそうだ。
泣き虫な私は、もう涙を我慢できない。
それでも彼の前では笑っていたくてうつむくと、彼の大きな手が私の頭を撫でる。
「なぁ、つぐ。これからも俺と一緒にいてくれないか? 俺、お前のこと……」
「九条さん、点滴交換です」
朝陽がなにか言いかけたそのとき、ノックと共にドアが開いて、看護師が入ってきた。