「なんで叱られてたのよ」

「トマト……食べなさいって」

「あはは」


私が笑うと、彼は私の手を力強く握り返してくれた。
そして……。


「母さん……。心配かけて……ごめん」


まだ少し苦しそうな彼が、それでもはっきりそう言うと、お母さんは泣き出してしまった。


「いいのよ。子供の心配をするのが親の仕事だもの」


そう。私たちは大人に守られている。
いつの間にか一人前の口をきけるようになって、自我というものが芽生えて……勝手にひとりで生きていると思い込んでいた。

でも、違う。
誰もひとりで生きてなんてない。

こうして家族に守られたり、友人や先生に守られて生きている。
その感謝を忘れてはいけない。


朝陽はまだ辛いのかすぐに目を閉じてしまう。
でもはっきりと意味の通る会話をしてくれたことで、私たちはホッと胸を撫で下ろした。