「朝陽、今日ね……いいこといっぱいあったんだ」


私は彼の手を握りながら口を開いた。


「皆がね、私のこと助けてくれたの。なんと、化学の森田先生も。私、ずっとひとりだと思ってたけど、違ったよ」


朝陽、聞こえてる? 

私は今、笑ってるんだよ。
朝陽も早く笑顔を見せて。


「……つぐ」

「朝陽?」


今、私を呼んだような。
お母さんも驚いたような顔をして朝陽を見つめている。


「うん。わかる?」


彼の耳元でそう言うと……。


「わかる、さ」

「朝陽……」


朝陽が初めてうっすらと目を開けた。


「ずっと、夢見てた。つぐに叱られてる夢」


酸素マスクをつけたままだから声がこもってしまう。
でも、昨日よりずっとはっきりと話ができている。