早紀が死んで私が泣いたように、金子さんにも泣いてくれる人はいるはずだ。
それに、私がそんなことをしたら、きっと朝陽が悲しむから。
朝陽がぐっとこらえて負の連鎖を断ち切ったように、私もそうしたい。
「ただ、自分がしたことと向き合って。これからどうすべきかよく考えて」
私はそれだけ言い残して、彼女の前から去った。
「こんにちは」
ICUの前まで行くと、朝陽のお母さんに出くわした。
「高瀬さん、今日も来てくれたの? ありがとう」
「いえ、私が来たくてしていることですから」
「今、面会できるわよ」
「本当ですか?」
それからすぐにお母さんと一緒に中に入れてもらった。
「朝陽、高瀬さん来てくれたわよ」
まだ眠っている朝陽はなんの反応も示さない。
でも、彼の胸元の布団が上下するのを見ているだけで幸せだった。