「どうして私に謝るの? これ以上大ごとにしてほしくないから?」
私に謝っても仕方ない。
早紀に謝るべきだ。
「早紀は……弱くなんてない。一番大切なものを捨てて、あなたに教えようとしたの。生きているって素晴らしいってこと」
少なくとも私は早紀に教えられた。
時に生きていくことが辛く苦しいこともあるけれど、生きているからこそ感じられる喜びもある。
生きていたから、朝陽に会えた。
「言葉は使い方を間違えれば鋭利なナイフになる。あなたは、早紀を殺したの」
私はわざと言葉をとがらせた。
未だ自分の身を守ることしか考えていない彼女の胸に突き刺さって抜けないように。
「あなたを殺したいほど憎いけど、あなたが死ぬと苦しむ家族がいる。泣く友達がいる。だから殺したりしない」