「なんだよ失礼な」


先生と同じ言い方をすると、先生はクスクス笑う。

そして、「世の中、いろんな人間がいるんだからな」と私の肩をポンと叩いて、理科室の方に行ってしまった。


森田先生の言う通り。
汚くてずるい大人はたくさんいる。

でもそれは私たち生徒も同じ。
だけど、きちんと心が育っている人もたくさんいる。

私はそれを忘れかけていた。


「高瀬、おかえり」


私が教室に戻ると、佐藤くんをはじめ数人が出迎えてくれるから、あまりに驚きすぎて一瞬言葉を失った。
しかも、それだけじゃなく……。


「俺たち、高瀬のことを守るって今決めたから。岸本にしてやれなかった後悔を、もう一回したくないじゃん?」

「皆、ありがとう。皆に頼っても、いい?」


ちょっと勇気を出したら、こんなに世界が広がった。