「先生。こんなことしたら、先生まで……」
クビになっちゃう。
先生のしてくれたことはうれしかったけれど、巻き込んでしまったことを思うと胸がつぶれそうに痛い。
だって、森田先生はまだ二十代のはず。
これから先の人生の方がずっと長い。
もしも教師を続けられなくなったら、私のせいだ。
「こう見えても意外と能力あるんだぞ。塾の講師でもなんでもできるから、気にするな」
森田先生が平然とした顔をしてそう言ってのけるから、泣きそうになる。
「お前のしていることは立派だし、応援する。だけど高瀬。わざわざ傷つく必要はないんだぞ」
どういう、こと?
私は首を傾げた。
「逃げるが勝ちって言葉あるだろ。辛いことに立ち向かうのも大切だけど、時には逃げることだって必要だ。高瀬の心がヘトヘトになって、岸本の二の舞いになったら、俺は悲しい」