「キャー!」


目の前から早紀が消え、次の瞬間電車が走り込んできて、鈍い音がした。


「落ちた!」


誰かが大きな声で叫んでいる。


「君、大丈夫か?」


近くにいた男の人に肩を揺さぶられたものの、自分がどこにいて、なにをしているのかわからない。


「救急車!」


何人もが大声で救急車を要請しているのを聞き、ハッと我に返る。


「早紀?」


早紀はどこに行ったの?


「早紀は?」


見ず知らずのスーツ姿の男の人に尋ねたけれど、彼は真っ青な顔をして私を見つめるだけでなにも言わない。


「あれ、早紀、どこ行っちゃったんだろ……」


すごい勢いで駅員が数人駆け寄ってきて、バタバタと慌ただしく響く革靴が作り出す音に耳が痛くなる。


「ありがとうございます。あとは我々が」


スーツ姿の男の人から駅員に引き渡された私は「君は大丈夫?」と聞かれて首をかしげる。