お父さんはそう言うと、お母さんをうながして立ち上がる。
ここは飲食禁止だ。
「はい。少し休んでください。なにかあったらすぐに知らせます」
「本当にありがとう」
そしてふたりは控室から出ていった。
ICUの方を眺めると、看護師がバタバタと走り回っている。
朝陽のいるはずのベッドには、カーテンが閉ざされていて、中の様子は見えない。
「ごめんね。手をつないでいてあげられないの」
でも、心の中でつないでる。
あなたが遠くに行かないように。
しばらく見ていると、看護師が朝陽のベッドのところに入っていき、すぐにドクターがやってきたのがわかった。
ドクドクと暴れはじめる心臓は、私の呼吸を速めてしまう。
「朝陽……」