今度こそ階段を下りると、病院へと走った。

朝陽の入院している病院は、犬に噛まれたときにお世話になった病院だ。
ICUの前の控室まで行くと、朝陽の両親が少し疲れた顔をしてソファに座っていた。


「おはようございます」

「高瀬さん……」

「あの、これ」


それは即席で作ったお弁当。
ふたりともなにも食べていないに違いない。


「朝陽くんにも食べてもらっていました。今、彼は食べられないから、代わりに食べていただけますか? お父さんとお母さんが元気じゃないと、朝陽くんが心配します」


私も早紀を失ったときは、何日も食べられなかった。

でも、朝陽は生きている。
これから私たちと共に、生きてくれる。


「ありがとう。そうだね。それじゃあ少し朝陽をお願いしてもいい?」