こんな会話を交わしたのは久しぶり。
早紀のことがあってから、母が私にビクビクしながら話しかけているのがわかっていたし、私も笑顔で話せなかった。
「つぐみ、あのお弁当、彼氏にでしょ?」
いつもお弁当を余分に作っても、母はなにも言わず見守ってくれていた。
「彼氏、じゃないけど、すごく大切な人。ケガが治ったら、紹介するね」
「えっ……それじゃあ昨日の事故は、その彼?」
「うん」
途端に瞳が潤んできてしまったけれど、歯を食いしばって耐え、笑顔を作った。
「でも大丈夫。絶対に連れてくる」
朝陽は絶対に治るから。
私がそう言うと、母はすごく優しい笑顔を向けてくれた。
母に学校を休む許可をもらい、病院へ向かった。
その途中で、あの神社に寄り手を合わせる。