あなたのせいで……と恨まれても仕方ないと思っていたのに、朝陽の両親は本当に優しい。
こんな人たちに育てられたから、朝陽はあんなに優しいんだ。
本当はずっとここにいたい。
ずっと朝陽の手を握っていたい。
でも、ICUには簡単に入れてもらえないし、私にできることなどなにひとつとしてない。
「また明日、来てもいいですか?」
「もちろんだ。きっと朝陽も待ってるよ」
結局夜道をひとりで帰せないと強く言ってくれる朝陽の両親に甘えて、タクシーで帰宅した。
その晩は、もちろん眠ることができなかった。
食事ものどを通らず、窓の外を眺めて朝陽のことだけ考える。
ドクターは山は越えたと言っていたけど、まだ予断を許さないとも言っていた。
どうか、これ以上朝陽を苦しめないで……。
すっかり雨雲が去った空には、月が煌々と輝き、私を照らしていた。
この光が朝陽にも届きますように……。