朝陽はそのままICUに入り、私たちは近づけなくなった。
朝陽が一命をとりとめたことで胸がいっぱいな私は、立っていることすら困難になり、廊下にそのまま座り込んでしまった。
「高瀬さん、ありがとう。遅くまで申し訳なかったね」
するとお父さんが私を立ち上がらせ、椅子に座らせてくれる。
壁にかかる時計を見るともう二十二時。
時間の経過がわからないほど私の頭は混乱していた。
「これで、タクシーで帰りなさい」
「いえ……」
お父さんが一万円札を握らせてくれたから慌てる。
さっき、母に電話で事情を話してもらい、遅くなることの承諾を得てくれた。
それだけで十分だ。
「朝陽は、高瀬さんの励ましがあったから、持ちこたえたんだと思う。本当にありがとう」