「ただ、残念ですが、腎臓はひとつ摘出しました。ですが、腎臓はもうひとつありますので、日常生活は問題なく過ごしていただけるはずです」
「はい。ありがとうございます」
ドクターの説明を聞きながら、お母さんがハンカチを握りしめ声を震わせる。
「これから、感染症などの危険が伴いますし、二十四時間体制で経過観察が必要です。当面、ICUで入院になります」
「はい。どうかよろしくお願いします」
お父さんが深く頭を下げると、朝陽を乗せたストレッチャーが出てきた。
私たちの前で止めてくれた看護師は、朝陽との対面を許してくれた。
「朝陽、よく頑張った。高瀬さんもいてくれてるぞ」
お父さんが話しかけたけれど、麻酔で眠っている彼はもちろん反応しない。
それでも幾分か顔色が戻っている彼の姿を見て、やっと酸素が肺に入ってきた。