だらんと垂れ下がっている彼の手を握ると、救急車の車内で手を握ったときより温もりが戻っていた。
「戻ってこないと、許さないから!」
もう一度生まれ変わってとは言わない。
あの辛い出来事を、もう一度経験しろなんて、とても言えない。
でも……私と一緒に歩いて。
この先の、未来を。
「こちらでお待ちください」
オペ室の前で朝陽の手を離すと、大きく深呼吸する。
朝陽は約束してくれた。
きっと彼は死んだりしない。
それから待ち続けること数時間。
やっとオペ室のドアが開いた。
「九条さんですね」
さっきとは違うドクターが、説明を始める。
「九条さんは、まだ予断は許しませんが、危険な山は越えたと思います」
ホントに?
安堵のあまり、腰が抜けそうになる。