もしかしたら、早紀がバラしたかどうかなんて、どうでもよかったのかもしれない。
日頃蓄積していく鬱憤をなにかで晴らしたかっただけ。
大人になりたいのになかなか認められなくて、説明のつかないイライラを抱える年頃の私たちは、とにかく自由を好む。
自分の行動に制限をかけてくる大人を「ウザい」のひと言で片付け、彼らに抑圧されていると感じている。
実際私も、父に対してそう思っている。
その憂さ晴らしのターゲットに早紀が選ばれてしまったのだと私は思っていた。
そのうち、ノートを破られたり、掃除の時にバケツの水をわざとかけられたりと、その内容がエスカレートしていった。
それでも私はなにもできなかった。
その標的が自分になることを恐れたのだ。
ただ、早紀と一緒にいるだけで、一度もかばうことはできなかった。