「朝陽!」
そこにふたりはいた。
朝陽は裕一先輩の胸ぐらをつかみ、眉を吊り上げ睨みつけている。
そして裕一先輩はあきらかに顔から血の気が引いていて、口をポカンと開けてなすがまま。
「お前の考えてることを、俺が今からしてやる!」
朝陽がそう言いながら裕一先輩を建物の端まで連れていく。
「朝陽、ダメ!」
彼らに駆け寄ろうとしたけれど、間に合わない。
そしてとうとう朝陽は裕一先輩をそこから落とそうと……。
「キャーッ」
もう見ていることができなくて、思わず目を両手で覆い、その場に座り込んだ。
イヤ……。朝陽……。
「ドン」という音が聞こえた瞬間、全身から力が抜ける。
私には、未来を変えられなかったと。
「つぐ」
朝陽の声がして恐る恐る顔をあげると、彼は苦しげな顔をして私の前にしゃがんだ。