少し傷の入ったローファーが、アスファルトにたまった雨水をビシャビシャと跳ねあげる。
でも、そんなこと気にならない。
私は未来へと走る。
「朝陽、死なないで!」
どれだけ叫んでも雨音でかき消されてしまう。
それでも、叫ばずにはいられない。
「朝陽、そばにいて!」
彼は『人は死ぬとき、必ず苦痛を伴うものなんだよ。だから、皆、簡単には死を選べない』と言った。
おそらくそれは、一度死を経験した彼の、心の叫びだったと思う。
お願い。死を選ばないで。
最後まであきらめないで。
あなたの苦しむ姿を、見たくない。
「あっ!」
必死に走り続けていると、ぬかるみに足を取られて派手に転んでしまった。
顔まで泥だらけになり、周りの人の視線を浴びる羽目になったけれど、今はそんなことどうでもいい。