「朝陽……待って。お願いだから」
朝陽に届くことを祈りつぶやくと、涙が勝手に流れていく。
でも、諦めない。
私は朝陽との未来を、絶対に諦めない。
おそらく朝陽は学校だ。
学校の屋上から飛び降りたことになっている彼は、そこで裕一先輩と対峙しているに違いない。
パラパラと降り出してきた大粒の雨は、やがてその量を増していき、私の体を突き刺してくる。
雨に濡れたあの日、『俺が必ずお前を守ってやる』って約束したじゃない。
私にはまだ朝陽か必要なの。
あなたがいないと、ひとりじゃなにもできないの。
早紀を失ったあの日も雨が降っていた。
だから雨なんて嫌いだった。
でもね、もし今日が朝陽の新しい人生の始まりだったら……きっと雨の日も趣深いなんて思えるんだよ。