午後になっても、雨はちっとも止む気配がない。
大降りというわけではなかったけれど、しとしとと降り続く雨は、私の気分も下げた。
少しくせのある髪は湿気のせいで膨らんでしまうし、ローファーからしみ込んだ雨水で濡れた靴下は、一日中私を不快にした。
同じクラスの親友、岸本早紀(きしもとさき)と一緒に下校するのはいつもの風景。
早紀はサラサラのストレートの長い髪を、いつもふたつに束ねている。
かわいらしい雰囲気で、特に笑った時の目が優しい。
でも今日は、最近沈みがちだった彼女の顔が不自然すぎるほど明るくて、なんとなく違和感があった。
「ねぇ、早紀、いいことあった?」
昇降口を出ると、青空のような水色の傘を広げる。
一方早紀の傘は、まるで紫陽花のような淡い紫色をしている。
「つぐみ、お弁当の唐揚げくれたじゃん」
「あはは、そんなこと?」