五人は誰もいない特別棟の廊下まで行き、私を取り囲んだ。


「なんですか?」

「高瀬さん、岸本(きしもと)さんのこと、今更なにか言ってるらしいじゃない」


やっぱり、そうか。
早紀の日記を提出したことが、彼女たちの耳にも入ったんだろう。


「今更ってなんですか? 早紀のことは絶対に忘れません」


大人数で囲んで威圧しているつもりだろうけど、引くつもりはない。


「私たちがいじめていた証拠なんてなにもないでしょ? 高瀬さんがひとりで騒いでるだけじゃない。迷惑なの」


金子さんは少しも心が痛まないのだろうか。
自分のことさえよければいいの?


「証拠が出てきました」


彼女たちの名前が記されていたわけではない。
いじめられていたということはわかっても、”誰が”を証明するのは難しい。