「子供みたい」
目の前におもちゃにつられ、我慢できない子供みたい。
でも、素直に感情を表している今の彼が眩しい。
靴を脱ぎ、波に向かって走っていく朝陽のうしろ姿を見ていると、じわじわと瞳が潤んでくる。
お願い、生きて。
ずっと私と一緒にいて。
そして、その手を汚さないで。
負の連鎖を、もう止めて。
辛いなんて言葉では片付けられないほどの壮絶な経験をした彼には、勝手すぎる願いかもしれない。
でも、このまま楽しい時を一緒に刻んでいきたい。
遠くを見つめると、白い波がザブンと押し寄せてくる。
私たちの人生も同じ。
何度も何度も波が押し寄せ、そのたびに足元をすくわれて……それでも立ち上がって生きていく。
朝陽に押し寄せた波は大きすぎて、彼は冷たい海水に飲まれてしまったけれど、二度目の人生は穏やかな海と共にあってほしい。