「それもそうだな。ホント、神社しか知らないな」


彼はまたクククと笑いだす。
目尻の下がったその顔は、私の一番好きな顔。


「どこ行きたいか考えとけ」

「うん。朝陽もね」


楽しみができた。

そのときふと思った。
週末の朝陽との約束までは、きっとワクワクした気持ちで満たされたまま生活できる。

ちょっと出かけるだけ。
それでもそのちょっとした楽しみがあるだけで、前を向いて歩いていける。

それなら……小さな楽しみを何度も何度も重ねていけば、彼はずっと幸せな気持ちでいられるんじゃないの?


私にできることはまだある。
あきらめちゃいけない。

朝陽を悲しみの底から救いたい。


「なにぼーっとしてるんだ。早く食わないと、俺が食うぞ」

「あっ、私の! 返してー」