担任の制止を振り切って昇降口に向かうと、朝陽が待っていた。
「先に帰ってって言ったよね……」
口ではそんなことを言いつつ、彼がこうして待っていてくれたことがうれしくてたまらない。
「俺が守るって、言ったよな」
「バカ……」
泣けてくるから、優しいことは言わないで。
「今日は冷えるな」
彼はそう言いながら近づいてきて、ポケットから飴を一粒取り出して私の手に握らせた。
「頑張ってるつぐに、ご褒美だ」
「ありがと」
そして、私の手をためらいもなく握った彼は、「今は俺がいる。休憩しろ」と私の緊張をほぐしてくれる。
彼の手は少し冷たかったけれど、伝わってくる温もりは、私の心に届いた。
たったあれだけ先生たちと対峙しただけで疲れてしまったことを見透かされている私は、朝陽の言う通りしばらく頭をからっぽにして、ただ空を流れていく雲を見ていた。