「俺、裕一を許せない。絶対に……許せない」


私にはなにも言えない。
私だって早紀を死に追いやったクラスメイトが憎くてたまらない。

でも、『死なない』とはどうしても言ってくれない彼がもどかしくてたまらない。


それからしばらく彼はなにも言わず、ただ私を抱きしめ続けた。


「朝陽。今からでも間に合うかな……」


私がそう言うと、彼は腕の力を緩め顔を覗き込む。


「あの日記でいじめがあったことを証明できる。せめて、早紀の弔いがしたい」


朝陽がいてくれなければ、私はこんなことを考えもしなかっただろう。
早紀のいじめを止められなかったときと同じように、余計なことに首を突っ込まず、自分を守ったに違いない。

でも……理不尽に命を失った朝陽の苦しい胸の内に触れた今、それでは済まされないと感じている。