「助手席に、どれだけ愛おしい人が乗っていても、おそらくそれは変わらない。それが人間というものだ」


朝陽はカップを置くと、私の隣にやってきて私を優しく抱きしめる。

でも、私はそれとは違う。
勇気がなかっただけ。


朝陽の腕の中で首を振ると、彼は私をつかまえて離さない。


「そうなんだよ、つぐ」


それはまるで私の罪の意識を軽くしようとしてくれているかのようだった。


「でも、早紀は?」


自分の命を守るようにプログラムされているのなら、どうして早紀は死に急いだの?


「つぐ。人は死ぬとき、必ず苦痛を伴うものなんだよ。だから、皆、簡単には死を選べない。でも、精神的苦痛がそれを上回ったら……」


彼のTシャツをギュッと握る。
早紀の心の傷はそれほど深かったのだろう。