「早紀、私といて楽しかったことを一生懸命書いてくれてて……それなのに私は、踏み込んで助けてあげられなかった。早紀を庇ったら、自分もいじめられるんじゃないかって、どこかで思ってたんだと思う」
野上先生は『助けられなかったことを責めることなんて誰もできない』と言っていたけど、やっぱり私は自分のことしか考えていなかった。
早紀を守っている気になっていた、ただの偽善者だ。
「そんなの、あたり前だろ」
「えっ?」
「誰だって、自分の命を守るようにプログラムされて生まれてくるんだ」
朝陽は私から視線を逸らさず続ける。
「たとえば……車の事故は助手席が一番危ない。それは、とっさのときに運転手が自分の身を守るために、右にハンドルをきるからだ」
それは聞いたことがある。