「降るかな」

「でも西の空は明るいよ? 大丈夫じゃない?」


私が降らない方にかけたのは、彼と一緒にいたかったからなのかもしれない。


「でも傘持ってないぞ?」


それは私も。だけど……。


「帰りたく、ない」


今はひとりになりたくない。

首を柔らかい真綿でじわじわと押さえつけられているような息苦しさを感じる。
命を奪われるほどではないのに、ずっと締め続けられるようなそんな感覚。


「お前それ、男に言ったらヤバイセリフだ」

「あ……」


朝陽に指摘され、耳が熱くなる。
そんなつもりじゃないんだけど……。


「でも、俺も帰したくない」


朝陽のひと言に胸が締めつけられる。

ずっと朝陽と一緒にいたい。
彼が生まれたこの神社で、ふたりだけの世界で生きていけたらどんなに幸せだろう。

ふとそんなことを考えていると、彼は私の手を握った。