「とにかく座れ」

「うん」


神様に『お邪魔します』と心の中で挨拶をしてから、いつもの階段に座った。


「なぁ、つぐって雨女?」


突然突拍子もないことをつぶやいた彼の視線の先をたどると、モクモクと真っ黒な雲が迫ってきている。


「違うと思うけど……」


季節の変わり目だからか、雨が多い。
でも、今日はそれさえ早紀が泣いているように感じてしまい、目を伏せた。


「じゃ、今日から雨女に決定」

「やめてよ。朝陽が雨男なんでしょ?」


口を尖らせ反論すると、「いいや、つぐだ」と決められてしまった。


こんなくだらない会話が今の私にはうれしい。

早紀の日記を読んだばかりで気持ちが高ぶりすぎている私は、冷静さを取り戻す時間が必要だった。