それからどれくらい経ったのだろう。
ハッと我に返り時計を見ると、待ち合わせの十三時を過ぎていた。

私は早紀の日記帳を自分の机の引き出しにしまい、家を飛び出した。


「つぐ」


もう先に来ていた朝陽が、階段の上から私を見つけて手を振ってくれる。


「遅れてごめんね」


階段を駆け上がると息が切れる。


「はぁ、はぁ……運動不足だー」


うっすらと汗をかいた私は、笑顔を作ったつもりだった。
それなのに朝陽は眉間にシワを寄せる。


「どうしたんだ……」


そして彼は大きな手で私の頬を包み込んだ。


「えっ、あっ……」


朝陽の前では笑っているつもりだったのに、もしかして、まだ目が赤い?

『なんでもない』と言いたいのに、声が出てこない。
そう言ったところで彼が納得してくれるようには思えなかった。