その瞬間、クシャッと顔を崩して笑う彼は「冗談」と言いながら空を見上げるから、私まで笑ってしまった。


「無事でよかった」


それなのに、突然声のトーンを下げた彼が深刻そうな顔をしてそう言うから、胸がコトンと音を立てる。


「ありがとう」

「うん」


昨日会ったばかりなのに、彼の声色が心地いい。


昇降口につくと、朝陽は私の荷物を持ったまま、自分の靴を履きかえるために別の下駄箱に行ってしまった。

私の隣を通っていくクラスメイトは、松葉づえをチラチラと見ながらも、誰ひとりとして話しかけてこない。

あの日から、皆私を避けるようになった。
早紀がいなくなった、あの日から。


「つぐ、どうかしたのか?」

「ん? なんでもないよ」


朝陽は青いラインの入った上靴を履いて戻ってきた。