なんと言ったらいいのかわからず黙っていると「なんか、俺の話ばっかりだね」と言われて焦る。


「ごめんなさい。朝陽が先輩はライバルだと言っていたので気になって……」


嘘をつくというのは、苦しいものだ。
先輩の顔を見ることができなくて、遠くの景色に視線を移した。


山の木々はいっそう葉を落としている。
確実に時間が過ぎている。急がなければ。


「ライバル、か。朝陽はそんなふうに思ってないと思うよ。俺、ホントはK大なんて全然届きそうになくて、推薦もらえなければ多分落ちる。でも朝陽は違う。アイツは実力で届きそうだ」


でも、その朝陽をあなたが殺すの。
朝陽の未来を、あなたが壊すの。


激しい怒りの感情が込み上げてきて泣きそうになる。
でも、まだ起こってもいないことを責めることはできない。