朝陽とケンカをしたと勘違いしている先輩は、心配げに私の顔を覗き込んでくる。
それなのに、未来の話をどう切り出したらいいのか考えあぐねている私は、うまく笑顔を作れない。
「あのっ、朝陽、K大に行きたいと言っていて……」
ストレートすぎるかもしれないと思った。
でも、遠回しにでは伝わらない。
「あぁ、知ってるよ。実は俺もそうなんだ。K大の法学部。朝陽も俺も、一応弁護士希望」
弁護士?
それを聞いて驚いてしまった。
だって弁護士って、人の罪を裁く側の人でしょう?
それなのに? それなのに、朝陽を?
朝陽はそれを知っていたから、余計に悲しかったのかもしれない。
「俺、親が弁護士で、それで俺もって」
たしか朝陽が裕一先輩は『親の期待が大きすぎて、押しつぶされそうになっている』と言っていた。