「ごめん。今のは忘れてくれ。明日の弁当も、楽しみにしてるな。じゃあ」


彼はそう言い残し、足を速めて離れていく。
まるで私にこれ以上はついてくるなと言っているかのように。

朝陽の大きな背中を見つめていると、胸が苦しくなる。
自分を裏切る人がいると知っていながら生きている彼の苦しみが、乗り移ったかのように。



次の日、私は裕一先輩と話をしたくて、なんとかコンタクトを取ろうとした。
とはいえ、朝陽と同じクラスの彼に朝陽にバレずに近づくことは容易ではない。


それに……自分がなにを話そうとしているのか、よくわからない。
ただ、裕一先輩を止めたいという気持ちだけで、突っ走っていた。

それでも、チャンスはやってきた。


「君、朝陽の彼女だよね。朝陽に用?」