「帰るか」


ずっと私の肩を抱いていた朝陽は、混乱でうまく話すことができない私を立たせた。


「――うん」


神様、朝陽を守って。
無力な私には、今はこうして祈ることしかできない。


それから、朝陽はまるで本当の恋人のように私の手を握ったまま街を歩いた。
そして私も、そうしていてほしかった。

彼の手の温もりが、すぐにでも涙がこぼれそうな私を救ってくれた。


「つぐ」


無言で歩いていると、朝陽が突然私の名を口にする。


「ん?」

「俺、つぐに出会えてよかった」


つらい過去を背負った彼の言葉に、再び視界が曇る。

偶然神社に引き寄せられた私たち。
それは悲しみを背負い二度目の人生を送る彼にとって運命だったとしたら、私の役割は、なに?