朝陽の胸の奥に、こんなに深い傷があるなんて知らなかった。
犬にかまれた傷なんて、比べ物にならない。

だって、噛まれた傷はいつか治る。
でも、朝陽の心の傷は永遠に癒やされることがない。

いや、本当に癒すことはできない? なんとかする方法はないの?

一瞬、そんなことを考えたけど、今はなにも思いつかない。

彼が時々見せる苦しげな顔の原因は、これだったんだ。


顔を手で覆い声を殺して泣いていると、朝陽は私の頭を抱き寄せ自分の肩に誘導する。


「ごめんな。泣かせるつもりはないんだ」


そんなことはわかっている。
でも、今は泣かせて。

あなたの重すぎる運命を、少しでも共有したい。


「朝陽が死んじゃうなんてイヤ……」