なさけない気持ちに押しつぶされながら、ようやく駅に着いた。
開いた扉から降りると、強い北風がわたしのおでこを全開にした。
「‥‥‥っ」
寒さで体にギュッと力が入る。
あぁ、しまった。朝からぼんやりしすぎていて、上着を忘れちゃったんだ。
家から最寄り駅まではお母さんが車で送ってくれたけど、ここから学校までは徒歩。だいたい15分はかかる。
別に、上着がなくても平気といえば平気な時季だけど、今日は特別寒いみたい。
最悪。けど、しかたない。あからさまに寒がってたら、まわりから「上着忘れたんだな」って思われちゃうし。やせ我慢して行かなくちゃ‥‥‥。
「おい」
「えっ?」
呼ばれて気づくと、タイショーが何かをわたしの前に出していた。
よく見るとそれは、彼がさっきまで羽織っていた薄手のステンカラーコートだった。
「へ‥‥‥?」
「何、やせ我慢してんだよ」
彼はごく当たり前のことのように、何食わぬ様子でコートを差し出してくる。
なんで‥‥‥すぐに気づくの? わたしが、やせ我慢してたこと。
わたし、電車に乗ってる時からタイショーを無視してたのに、なんですぐに気づいてくれるの?