中一の秋。
普段は日曜に来るタイショーが、めずらしく土曜にやって来た日のことだ。
どんよりと濁った曇り空の日だった。
彼は家の前で原付を停めると、暗い表情で2階の姉の部屋を見上げた。
なんだか雰囲気がおかしい‥‥‥そう感じたわたしは、カーテンに隠れるようにして、彼の様子を見守っていた。
しばらくすると、姉が家から出てきた。
「何しに来たの? ご機嫌取りなら帰ってよ!」
「ミホ、ちゃんと聞けって」
「なんで言い訳を聞かなきゃいけないわけ」
「言い訳じゃねーし」
初めて見る、ふたりのケンカ。
と言っても一方的に姉が怒っていたのだけど、その台詞の内容から、だいたいの事情は飲みこめた。
どうやら、タイショーが他校の女子と数人のグループで遊びに行ったことが原因らしい。
そして、そのとき女子からもらったキーホルダーを彼が使っている、というのが姉の主張だった。