気が抜けて、ベッドに腰を下ろした。

入院着を引き上げながら、林太郎がのぞきこんでくる。



「心配してくれた?」

「当たり前じゃん、目の前であんなぼたぼた血流されて」

「あっちゃんは安心すると、不機嫌になるがの」



昔からそうやがの、と楽しそうに笑う。



「何それ」

「僕、できんのにあっちゃんの真似して、熱出したり怪我したりしてたが、あっちゃんいっつも泣きそうな顔で心配してくれた」

「責任感じてたんじゃない?」

「ほんでちょっと治ってくると、急に怒りだすんや、あんたバカでしょって、変わらんね」



バカでしょ、と言いかけて、危ういところでやめた。

何へらへら笑ってるんだよ、バカ。

あんた死にかけたんだよ、バカ。



「林太郎だって、たいして変わってないでしょ」

「嘘やあ、全然違うが、僕もう風邪もひかんで」

「よく言うよ」



こんな怪我しといて、というつもりで、林太郎の前襟に指をかけて、胸が見えるようちょっと割った。

別になんの他意もない行動だったんだけど、脇の紐を結んでいる最中だった林太郎が、びっくりしたように手を止めて、私を見たので。

私は何か、とんでもないことをしてしまったような気になった。



「か、変わってないよ、頼りなくて」



動揺したのを隠したくて、思わず口から出た憎まれ口に、林太郎は残念そうに、えーとつぶやく。



「それは僕やなくて、あっちゃんが、自分をわかってえんのやって」

「どういう意味?」

「女の子やって意味や」



急に腕をつかまれて、引っ張られるまま、顔から布団に突っ込んだ。

何すんのよ! と起きあがろうとしたところを、くるっと仰向けに引っくり返され、言葉を失う。

私の肩を押さえつけて、自由を奪ってから、林太郎が、ほらの、と満足げに見おろしてきた。