フレキシブル・ソウル


「学校も別やって、あっちゃんに好きな奴とかいても、僕わからんが、ほやでひって不安なるん、わからん?」

「ひって?」

「むっちゃってことやが、話の腰折らんといて!」

「正確に把握しようとしただけじゃん!」

「ほんなん流れでわかるが! あっちゃんはいっつもほや、僕が真面目な話しようとすると、はぐらかすんや」



別にはぐらかそうとしたわけじゃない。

感情的になると訛りがきつくなる林太郎の言葉の意味を、ちゃんと知りたかっただけだ。



「人のこと薄情みたいに言うな」

「じゃあ、真面目に聞いてくれるん」

「聞いてるよ、いつだって」

「嘘や、こないだかって、聞いてくれんかった」

「じゃあ聞くよ、聞くから言えば!」

「ほんなん、聞く態度と違う」



どうしろってのよ! と思わず怒鳴った時、おじさんがひとり、仲よくなあ、と言いながらそばを通りすぎていった。

はっと気づくと、周りで作業中だった人たちが、苦笑しながらこっちを見ている。



「林太郎、場所変えよ」

「嫌や」



手を引こうとしたら、逆に引っ張られて、よろけた。

恥ずかしさも手伝って、腹が立つ。



「何言ってんの」

「僕、わかるんや、こういうん、場所なんか変えたら、もう続き、言えなくなるんや」



林太郎が、ぎゅっと手を握ってきた。

ちょっと、やめてよ、こんなところで。

なんて、とても言えないくらい、その目は真剣で、決意に満ちていた。



「僕な」



まずい。

林太郎、ダメだ。

ダメなんだよ。


その時、視界の端に、柔らかい光が映った。

蛍にしては、時間も場所も変だと思って、気がついた。


──光っているのは、私だ。