ふっと部屋が明るくなった。
山のふもとは暗いのを見るに、この病院の非常電源が作動したらしい。
部屋に吹きこむ風雨も、不思議と同時に和らいだ気がする。
心強く灯る照明の下、伸二さんと対峙していたテンが、あーあと大きく息をした。
「“時”が行っちまった、また待ち時間だ」
「それが仕事だ、そもそもお前はあの男から、なんの希望も吸い上げていないだろう」
「言わねえんだもんよ、あのおっさん、トワを死なせちまったのが、よほどこたえたと見えるぜ」
死神たちの会話を聞きながら、村長の様子を確認する林太郎に寄り添った。
林太郎は、首のあたりまで毛布をかけてあげると、念のため、という感じにナースコールをした。
廊下が騒がしいから、どのみちすぐに看護師さんが来てくれるだろう。
「トワとはお前の前任だな? 番号を引き継いだのか」
「そうだよ、10でトワだ、まあ読めなくもないやな」
「なぜ消滅した」
「そこのおっさんが、奴にエサを与えてやらなかったからだよ」
「エサとは」
伸二さんが怪訝そうに眉をひそめる。
テンは、あからさまに見下した顔つきで彼を見返すと。
「かわいそーな奴」
そう吐き捨てて、ふっと消えた。
伸二さんは、ガラスの散った部屋にぽつんと佇んで、何事かを考えているようだったけれど。
やがて同じように、ふわりと消えた。
「ね、林太郎」
「ん」
「おじさん、パソコンか何か、使ってた、この部屋で?」
この事態の中、唐突な質問に林太郎は目をぱちくりさせて、それでも律儀に、使ってた、と引き出しから小ぶりのノートPCをとり出した。
「村議会の人とやりとりとか、せんとあかんかったし、つい数日前まで、元気な時は、よくこれで遊んでたわ」
「ちょっと、見たいサイトがあるんだけど」
「いいよ、ちょっと待ってや」
村長を起こさないようにそっと、ベッドの足元のほうにあるテーブルの上で、素早くログインをする。