苦しげな呻きは、予想外のところから聞こえてきた。
戸口のあたりに、うずくまる黒い影。
おかしくなったテレビ画面みたいに、時々、像がぶれる。
テンはがくがくと震えながら顔を上げ、窓のほうに向かって、吼えた。
「伸二ィ!!」
窓のすぐ外、荒れ狂う雨と風の中の一点が、ふと動きをとめる。
それは、何かに電源が入る時のような、低いさざめきと共に大きくなり。
気がついた時には、伸二さんがそこにいた。
「てめえ、あんな無茶苦茶な"干渉"しやがって、ヘタしたら全員弾けとんでんぞ!」
「お前の腕なら、大丈夫だと踏んだ」
ふわりと室内に降りると、私とテンの間に立つ。
「この娘が待てと言ったら、俺はそれを叶える」
「待つ待たねえの問題じゃねえことくらい、わかんだろ」
「いや、お前はわざと、今、彼女の前でこの男をつれていこうとした、この男の“時”が、また来るのを知っていて」
「だからなんだ、別に違反じゃねえだろ」
伸二さんの身体が、帯電したようにパチパチと音をたてはじめた。
部屋の空気がまた変わったようで、肌が粟立つ。
「本人の望みも無視か、貴様それでも同業か」
「それこそお前に関係ねえわ」
伸二さんが深く息をついて。
お前に訊きたい、と静かに言った。
「“いじくられた脳ミソ”とは、なんだ」
その声は、怒りに満ちているようでもあり。
悲しみに暮れているようでもあった。
戸口のあたりに、うずくまる黒い影。
おかしくなったテレビ画面みたいに、時々、像がぶれる。
テンはがくがくと震えながら顔を上げ、窓のほうに向かって、吼えた。
「伸二ィ!!」
窓のすぐ外、荒れ狂う雨と風の中の一点が、ふと動きをとめる。
それは、何かに電源が入る時のような、低いさざめきと共に大きくなり。
気がついた時には、伸二さんがそこにいた。
「てめえ、あんな無茶苦茶な"干渉"しやがって、ヘタしたら全員弾けとんでんぞ!」
「お前の腕なら、大丈夫だと踏んだ」
ふわりと室内に降りると、私とテンの間に立つ。
「この娘が待てと言ったら、俺はそれを叶える」
「待つ待たねえの問題じゃねえことくらい、わかんだろ」
「いや、お前はわざと、今、彼女の前でこの男をつれていこうとした、この男の“時”が、また来るのを知っていて」
「だからなんだ、別に違反じゃねえだろ」
伸二さんの身体が、帯電したようにパチパチと音をたてはじめた。
部屋の空気がまた変わったようで、肌が粟立つ。
「本人の望みも無視か、貴様それでも同業か」
「それこそお前に関係ねえわ」
伸二さんが深く息をついて。
お前に訊きたい、と静かに言った。
「“いじくられた脳ミソ”とは、なんだ」
その声は、怒りに満ちているようでもあり。
悲しみに暮れているようでもあった。