村長の身体も、ほわほわと光を帯びてきた。

横で見守る林太郎が、なぜその異変に気づかないのかわからない。

でも彼は、まるでまったく切り離された空間にいるみたいに、じっと黙って、座っている。

そこだけ時間の流れが違うみたいに。



「テン…!」

「黙ってろ、“近い”と巻きこまれるぞ」



部屋の中の空気が、渦のように音をたてて流れる。

電灯は煌々と室内を照らしているのに、視界は薄暗く、時折ちかちかと不快に瞬く。


窓の外で、閃光が走った。

一瞬ののち、轟音に大地が震えた。

照明がふっと消えて、すぐにまたつく。


冷たい汗をかきながら、私の目には、雷光が浮かびあがらせたものが焼きついていた。


山裾の合掌鳥居と。

山の頂上から連なる、キツネの形をした鉄塔。


間違いない。

村長は──“管理人”だ!



「きゃああ!」

「あっちゃん!」



突然の、何かが砕ける激しい音と、殴りこんできた風雨にすくみあがった。

林太郎が抱きとめてくれなかったら、たぶん吹き飛ばされていた。


いまや室内は真っ暗で、非常灯だけが足下と戸口のあたりに漂っている。

大きな窓ガラスは粉々に割れ、カーテンを引きちぎりそうな勢いで雨と風が室内を侵略していた。



「あっちゃん、大丈夫、ケガせんかった」

「へ、平気、たぶん…」



それより村長は、どうなったの。

林太郎の腕の中から、こわごわのぞくと、彼はベッドに横たわったまま、息をしていた。

光ってもいない。



「どういうこと…」

「う…」