暑い日が続くしなあ…と理由を見つけようとしつつも、実のところ、特にこの人の言葉を疑っていない自分がいる。

ただの変な人よりは、まともな死神のほうが心配がないようにも思える。

中腰の姿勢に疲れた私は、腰を伸ばした。



「で、倒れた理由はわかりましたか」

「わからない、でももういい」



言いながら死神も、よいしょと身軽に立ちあがった。

特に小柄でも長身でもない、均整のとれた身体が目の前に立つ。



「ところでここ、どこかな」

「…それは、どのくらいの単位で答えればいいですか」



県名から必要だろうか、それとも駅名を言えばわかるのか、もしかして座標レベル?

死神の求める答えがわからなかったので、バカな返答をする前に確かめたのに、やっぱりバカにしたように鼻を鳴らされた。



「きみは人に場所を訊かれて、ここは日本ですって答えるわけか」

「“人”に訊かれたなら、それなりに対応しますよ」



微妙にムッとすると、死神が、そうかとうなずく。

物腰は柔らかいわりに、妙に尊大で、それにしちゃびっくりするほど素直だ。



「じゃあ“人”に訊かれた体で、よろしく」



よしきた、と答えようとして、言葉に詰まった。

普通の人に、ここはどこですかって質問を受けるシチュエーション自体、想像できない。

迷った結果、町名と駅名と、目の前にある交差点の名前と、そこを走る国道の番号を教えた。