「あの、大丈夫ですか」



若い男の人だった。

白いTシャツにジーンズを履いて、足元は…。


裸足。


まずい、変な人だ。

声かけちゃった、とうろたえつつも、変な人だって助けが欲しい時くらいあるだろうと自分を叱咤し、かがみこんで肩を叩く。


その冷たさに、ぎょっとした。

思わず手をひっこめてから、そんな馬鹿な、ともう一度さわってみると、今度は普通の体温だった。



(あれ?)



自分こそ、照りつく太陽に焼かれすぎたんだろうか。

そう首をひねっていると、男の人が身じろぎする。

何か言っているみたいに口が動くけれど、聞きとれない。



「あの、水でも持ってきましょうか」

「…アノとはなんだ」



うなるような声と共に、頭を抱えていた腕が外されて、ようやく顔が見えた。

綺麗な顔立ちだと思ったけれど、それは最初だけで、すぐに、いや意外と普通だな、と印象を訂正する。


その人は緩慢な動作で身体を起こすと、アスファルトにあぐらをかいて、眠気でも払うみたいに頭を振った。

うう…とつらそうなうめき声が聞こえる。

やっぱり熱射病か日射病か。

あの、ともう一度呼びかけると、青光りするほど真っ黒な瞳が、ぱっと私を見た。



「大丈夫ですか」

「大丈夫」