暗がりで、カシャンと聞き慣れた音がした。
「おじさん?」
一瞬の間があいて、ぱっとあたりが明るくなった。
懐中電灯の光を向けられて、まぶしさに顔をそむける。
するとすぐ脇に、もうひとり倒れているのが見えた。
「林太郎!」
私と同じように、腕をうしろに回されて、ぐったりと地面に倒れている。
顔には乾いた血がこびりついていて、呼んでもぴくりともしない。
「林太郎…!」
「悪かったな、その坊主は、だいぶ抵抗したんでな、こっちも手加減できんかった」
やっぱりさっきのは、ミサキ号のスタンドの音だ。
おじさんは、私と林太郎の自転車を、倉庫らしきこの場所に運びこんだところらしかった。
土嚢に上半身を預ける格好になっていた私は、転がり落ちる勢いを利用して、林太郎のそばまで這う。
「林太郎、ねえ、うわっ、わっ」
「動かさねえでくれ」
突然、縛られた手に、冷たくて濡れたものを握らされた。
ずるずると回転するそれを、言われるままにぎゅっとつかむと、ぺきっと音がする。
おじさんはその水を、びしゃびしゃと林太郎の顔にかけて、ついでに半開きの口にも流しこんだ。
ついに林太郎が、むせながら顔をそむけ、目を開ける。
びしょ濡れの顔で、ぼんやりと視線を動かすと、私と同じように、勢いよく身体を起こそうとして、あえなく倒れた。
「なんや、これっ」
「林太郎、大丈夫?」
初めて私に気づいたらしく、ぱっとこちらを見る。
あっちゃん、と青ざめた顔でつぶやいた。
「あっちゃんこそ、大丈夫やの、どこも痛くない?」
「すまんな、あとちょっとの辛抱だ」
「誰じゃお前、あっちゃんまで縛りやがって、解けま!」
見たこともない剣幕で怒鳴った林太郎に、おじさんが驚いた顔をする。
「おじさん?」
一瞬の間があいて、ぱっとあたりが明るくなった。
懐中電灯の光を向けられて、まぶしさに顔をそむける。
するとすぐ脇に、もうひとり倒れているのが見えた。
「林太郎!」
私と同じように、腕をうしろに回されて、ぐったりと地面に倒れている。
顔には乾いた血がこびりついていて、呼んでもぴくりともしない。
「林太郎…!」
「悪かったな、その坊主は、だいぶ抵抗したんでな、こっちも手加減できんかった」
やっぱりさっきのは、ミサキ号のスタンドの音だ。
おじさんは、私と林太郎の自転車を、倉庫らしきこの場所に運びこんだところらしかった。
土嚢に上半身を預ける格好になっていた私は、転がり落ちる勢いを利用して、林太郎のそばまで這う。
「林太郎、ねえ、うわっ、わっ」
「動かさねえでくれ」
突然、縛られた手に、冷たくて濡れたものを握らされた。
ずるずると回転するそれを、言われるままにぎゅっとつかむと、ぺきっと音がする。
おじさんはその水を、びしゃびしゃと林太郎の顔にかけて、ついでに半開きの口にも流しこんだ。
ついに林太郎が、むせながら顔をそむけ、目を開ける。
びしょ濡れの顔で、ぼんやりと視線を動かすと、私と同じように、勢いよく身体を起こそうとして、あえなく倒れた。
「なんや、これっ」
「林太郎、大丈夫?」
初めて私に気づいたらしく、ぱっとこちらを見る。
あっちゃん、と青ざめた顔でつぶやいた。
「あっちゃんこそ、大丈夫やの、どこも痛くない?」
「すまんな、あとちょっとの辛抱だ」
「誰じゃお前、あっちゃんまで縛りやがって、解けま!」
見たこともない剣幕で怒鳴った林太郎に、おじさんが驚いた顔をする。